2026年2月、主要AIモデルが8つも同時にリリースされた。
Gemini 3 Pro、Claude Opus 4.6、Claude Sonnet 5、GPT-5.3-Codex、Qwen 3.5、GLM-5、DeepSeek V4、Grok 4.20。
1ヶ月にこれだけのモデルが出揃うのは、AI史上初めてのことだ。
今回は、各モデルの性能・コスト・得意分野を整理して、用途別の使い分けを考えてみた。
(参考:The February 2026 AI Model Rush)
8モデルの概要を一覧で整理する
まず全体像を把握するために、8モデルを一覧表にまとめた。
| モデル | 企業 | 主な強み | 注意点 |
|---|---|---|---|
| Gemini 3 Pro | Elo 1501で推論首位。GPQA 91.9%。マルチモーダル(テキスト・画像・音声を横断して処理する能力)が最強。100万トークン(書籍約10冊分の情報を一度に処理可能) | SWE-benchは74.2%でコーディングでは劣る | |
| Claude Opus 4.6 | Anthropic | SWE-bench 80.8%。Agent Teamsで複数エージェント協調。100万トークン | 入力$5/出力$25(約750円/3,750円)と高コスト |
| Claude Sonnet 5 | Anthropic | SWE-bench 82.1%でコーディング首位。Opusより80%安い(入力$3/出力$15=約450円/2,250円)。100万トークン | 推論の深さではOpusに劣る |
| GPT-5.3-Codex | OpenAI | Spark版は秒速1,000トークン超。Cerebras専用チップで超高速推論 | Spark版のSWE-benchは56%。速度と精度のトレードオフ |
| Qwen 3.5 | Alibaba | 397Bパラメータ。Apache 2.0(商用利用も自由なオープンソースライセンス)。入力$0.12(約18円)/1Mトークン。201言語対応 | 英語・日本語の精度は欧米モデルにやや劣る |
| GLM-5 | Zhipu AI | 745Bパラメータ。MITライセンス(誰でも無料で使えるオープンソースライセンス)。幻覚率(AIが事実と異なる内容を生成してしまう割合)が過去最低を記録 | グローバルでの実績がまだ少ない |
| DeepSeek V4 | DeepSeek | 1兆パラメータ(32B稼働)。入力$0.10(約15円)/1Mトークン。Engram(独自の新しいAI設計方式) | ベンチマークは未検証。データガバナンスの懸念 |
| Grok 4.20 | xAI | 200万トークン超のコンテキスト。Xのリアルタイムデータと連携 | 未リリース(2月下旬予定)。エコシステムがXに依存 |
中国勢が3つ(Qwen、GLM、DeepSeek)入っているのが今回の大きな特徴だ。
米中AI競争が、モデルレベルで本格的にぶつかり合っている。
APIコストの比較
各モデルの価格差がかなり大きいので、コストも表にまとめておく。
| モデル | 入力(/1Mトークン) | 出力(/1Mトークン) | コンテキスト | オープンソース |
|---|---|---|---|---|
| Gemini 3 Pro | $2〜4(約300〜600円) | $12〜18(約1,800〜2,700円) | 100万 | No |
| Claude Opus 4.6 | $5(約750円) | $25(約3,750円) | 100万 | No |
| Claude Sonnet 5 | $3(約450円) | $15(約2,250円) | 100万 | No |
| GPT-5.3-Codex | 未公開(Pro限定) | 未公開 | 40万+ | No |
| Qwen 3.5 | $0.12(約18円) | $0.12(約18円) | 100万 | Yes(Apache 2.0) |
| GLM-5 | $0.80(約120円) | $2.56(約384円) | 長文対応 | Yes(MIT) |
| DeepSeek V4 | $0.10(約15円) | 未公開 | 100万 | Yes |
| Grok 4.20 | 未公開 | 未公開 | 200万+ | No |
最安のDeepSeek V4とQwen 3.5は、Claude Opus 4.6の約50分の1の価格。
この価格差は無視できない。
コーディング性能:Claude Sonnet 5が頭一つ抜けている
まずコーディング用途。今一番競争が激しい領域だ。
Claude Sonnet 5はSWE-bench(GitHub上の実際のバグ報告をAIが自力で修正できるかを測る指標)で82.1%を記録した。
5つのバグのうち4つを自律的に修正できるレベルに達している。
実コーディングの精度でいえば、現時点ではSonnet 5がトップ。
ただし、Opus 4.6もSWE-bench 80.8%とSonnet 5に迫る数値を出している。
しかもOpus 4.6にはAgent Teams機能がある。複数ファイルにまたがる大規模なコーディングタスク——たとえばプロジェクト全体のリファクタリングや、設計判断を伴う複雑な実装——ではOpus 4.6のほうが強い。
単一ファイルの修正精度ならSonnet 5。プロジェクト全体を俯瞰する作業ならOpus 4.6。
コーディングでもこの2つは用途に応じて使い分けが効く。
GPT-5.3-Codexは「Spark」という軽量版を用意して、リアルタイムの応答速度で勝負に出た。
Cerebras社(AI専用の超高速プロセッサを作る会社)の専用チップで動作し、秒速1,000トークン以上という驚異的な速度を実現している。ただしSWE-benchは56%と精度は落ちる。
フルサイズのGPT-5.3-CodexはTerminal-Bench 2.0で77.3%を記録。コマンドラインで複数の操作を組み合わせる作業に強い。
DeepSeek V4もSWE-bench 80%超を記録。
欧米モデルの10〜40倍低いコストでほぼ同等の精度を出している。コストを抑えつつ高い精度が必要なら有力な選択肢だ。
(参考:DeepSeek-V4とは何か?次世代AIモデルを徹底解説)
推論・分析:Gemini 3 Proがベンチマーク首位
純粋な推論能力では、Gemini 3 ProがLMArena Eloスコア(AIモデル同士を対戦させてランキング化する総合評価)で1501を記録。
初めて1500の壁を超えたモデルだ。
(参考:Did Google’s Gemini Just Say Checkmate to OpenAI’s ChatGPT?)
GPQA Diamond(大学院レベルの物理・化学・生物の難問テスト)で91.9%、MathArena(数学オリンピックレベルの問題を解くテスト)でも最高スコアを記録しており、数学・科学分野の推論ではトップ。
100万トークンのコンテキストで、大量のドキュメントを一括で処理できるのも強みだ。
Claude Opus 4.6も推論能力は非常に高い。
特にAgent Teams機能(複数のAIを同時に動かしてチームとして作業させる仕組み)で、複雑なタスクを分解・実行できるのが大きな特徴だ。
(参考:Introducing Claude Opus 4.6)
「一発の回答精度」ならGemini 3 Pro。「複雑なタスクの遂行力」ならClaude Opus 4.6。
コスト比較:中国モデルの価格破壊がすごい
ここが一番インパクトがある部分かもしれない。
Qwen 3.5はオープンソースで、APIコストは1Mトークンあたり$0.07〜$1.10(約10〜165円)。
Claude Opus 4.6やGPT-5.3-Codexの数十分の一の価格で使える。
DeepSeek V4も、欧米モデルと同等レベルの性能を10〜40倍低いコストで提供している。
「性能は欧米モデルに迫りつつ、コストは10分の1以下」。
この構図が今のAI業界を象徴している。
ただし、コストだけで選ぶのは危険だ。
中国モデルの場合、データの取り扱いポリシーやプライバシーの観点で懸念がある。
機密性の高い業務データを扱う場合は、その点も考慮に入れる必要がある。
エージェント機能:「AIに仕事を任せる」時代が来ている
もう一つの大きな変化。エージェント機能が標準装備になりつつある。
2月リリースのモデルの中で、エージェント機能が特に充実しているのはこの3つ。
- Claude Opus 4.6 — Agent Teams:複数のAIエージェントが並列で協調作業する。デモでは16体のエージェントが並列で動き、2週間で10万行のCコンパイラを書き上げたという事例がある
- GPT-5.3-Codex — 長時間エージェント:数時間にわたるコーディングタスクを自律的に実行。途中で止まらず最後まで完了させる設計
- Gemini 3 Pro — Deep Think:時間をかけてじっくり考える推論モードで、複雑な分析や調査タスクに対応
「人間がプロンプトを書いて、AIが1回答える」という時代は終わりつつある。
タスクを渡して、AIが最後まで自律的にやり切る。そういうフェーズに入った。
用途別:結局どれを使えばいいのか
正直に言うと、一般的な用途——文章の作成、要約、翻訳、コード補助、調べものの整理——であれば、どのモデルを使っても十分なレベルに達している。
2024年には「このタスクにはこのモデルじゃないと無理」みたいな場面が多かった。
でも2026年2月の時点で、主要8モデルはどれも一般用途では問題なく使えるところまで来ている。
差が出るのは、特定の性能を高いレベルで要求する場面だ。
そういうケースでの使い分けを整理してみた。
| 用途 | おすすめモデル | 理由 |
|---|---|---|
| コーディング(精度重視) | Claude Sonnet 5 | SWE-bench 82.1%。実コーディング精度が現時点で最も高い |
| コーディング(スピード重視) | GPT-5.3-Codex | Codex Sparkでリアルタイム応答。長時間タスクも得意 |
| 推論・分析 | Gemini 3 Pro | Elo 1501でベンチマーク首位。長文コンテキストにも強い |
| 複雑なプロジェクト管理 | Claude Opus 4.6 | Agent Teamsで複数エージェント協調。総合力が最も高い |
| コスト重視(高品質) | DeepSeek V4 | 欧米モデルに迫る性能を10〜40倍低コストで提供 |
| コスト重視(ライト用途) | Qwen 3.5 | $0.07〜(約10円〜)/1Mトークン。オープンソースで自社運用も可能 |
| SNS分析・リアルタイム情報 | Grok 4.20 | Xのリアルタイムデータと直接連携できる |
| マルチモーダル処理 | GLM-5 | 画像・動画・音声をまとめて理解・処理する能力が強化されている |
大事なのは「どのモデルが最強か」じゃない。
「自分の用途に何が合うか」だ。
全部賢い。だからこそ「特化領域」で選ぶ時代になった
8モデルの性能を整理してみて、改めて感じたことがある。
どのモデルも、一般用途なら何でもできるレベルに到達している。
文章生成、要約、翻訳、コードの補助、データ整理——。
こういった日常的なタスクでは、正直どれを使っても大きな差は感じない。全部賢い。
差が出るのは、特定の領域で高い性能を求めるときだ。
SWE-bench 80%超のコーディング精度が必要ならSonnet 5かOpus 4.6。
大学院レベルの推論が必要ならGemini 3 Pro。
コストを極限まで抑えたいならDeepSeek V4かQwen 3.5。
複数エージェントを協調させたいならOpus 4.6。
「どれが一番か」ではなく、「何を一番求めているか」で選ぶ。
それが2026年のAIの使い方だと思う。
逆に言えば、まだ特別な用途が決まっていない段階なら、どのモデルでもいいから使い始めるのが正解だ。
使っていくうちに「ここはもうちょっと精度がほしい」「コストを下げたい」という場面が出てくる。そのとき初めて使い分ければいい。
8モデルが同時に出たということは、全てのAIが底上げされたということ。
これは混乱じゃない。ユーザーにとっては、どこから始めても当たりの時代になったということだ。
AI LIFEコミュニティでは、こうしたAIモデルの最新動向や実際の使い分け方法を日々共有しています。
「結局どれを使えばいいの?」という疑問を一緒に解決していきましょう。