GitHubのコミットの4%が、すでにAIによるものだという。
SemiAnalysisが2026年2月5日に出したレポートで明らかになった数字だ。Claude Code単体で、1日あたり13万5,000件以上のコミットを生成している。しかもこの数字は急伸しており、年末には20%を超えるという予測もある。
(参考:Claude Code is the Inflection Point | SemiAnalysis)
自分もClaude Codeを毎日使っている。このブログのシステムだって、Claude Codeで作った。だから「4%」という数字に驚きはあるけど、違和感はない。むしろ「まだ4%なのか」とすら思う。
イーロン・マスクは2月15日に「年内にプログラミングは完全自動化される」と発言した。Collins辞典は「Vibe Coding」を2025年の年間ワードに選んだ。FigmaとAnthropicは「Code to Canvas」という新機能を発表した。
「プログラミングの死」が、あちこちで語られている。
でも本当に死ぬのか。それとも、別のものに変わるのか。
開発者として日々AIとコードを書いている立場から、今起きていることを整理する。
GitHubの4%がAIになった
まず、数字を正確に把握しておきたい。
SemiAnalysisのレポートによると、Claude Codeは13ヶ月で42,896倍の成長を遂げた。2025年初頭のリサーチプレビューから数えて、わずか1年あまりでの爆発的な伸びだ。
しかもこれはClaude Codeだけの数字。GitHub CopilotやCursor、Windsurf、Bolt.newなど他のAIコーディングツールを合わせれば、実質的なAI生成コードの割合はもっと高い。
GitHubが公開しているデータによると、Copilotユーザーが書く新規コードのうち約41%がAIによる生成だという。これはあくまでCopilot利用者に限った数字だけど、AIコーディングツール全体を含めれば実態はさらに大きい。
(参考:Claude Code accounts for 4% of GitHub’s public commits | GIGAZINE)
AIコーディングツールの普及速度は、体感としてもかなり速い。自分の周りの開発者でも、何かしらのAI支援ツールを使っていない人のほうが少なくなってきた。
「Vibe Coding」が辞書に載った
この流れを象徴する言葉がある。「Vibe Coding(バイブコーディング)」だ。
OpenAI共同創業者のAndrej Karpathyが2025年2月に造った言葉で、Collins辞典が2025年の年間ワードに選んだ。Karpathyの定義はこうだ。「コードの存在を忘れて、ノリに身を任せる開発スタイル」。
(参考:Collins Word of the Year 2025)
音声で指示を出して、AIがコードを書いて、エラーが出たらそのままコピペしてAIに直させる。キーボードにほとんど触れない。コードを「読む」ことすらしない。
日本でもバイブコーディングは急速に広まっている。全日本AIハッカソン2026ではプログラミング未経験者向けのトラックが用意され、経営者限定のハッカソン「トップソン」では参加者がわずか5分でプロトタイプを作る場面もあった。日経クロステックでは「教員必携スキル」とまで評されている。
(参考:バイブコーディングは「教員必携スキル」| 日経クロステック)
プログラミングを知らない人が、自分のアイデアをそのままアプリにできる。「エンジニアに頼まないと作れなかった」ものが、自分で作れる。
さらに2月17日、FigmaとAnthropicが「Code to Canvas」を発表した。Claude Codeで生成したUIのコードを、そのまま編集可能なFigmaデザインに変換する機能だ。開発フローが「デザイン→コード」から「コード→デザイン」に逆転し始めている。
(参考:Figma partners with Anthropic on AI feature integrating Claude Code | CNBC)
コードを「書く」のではなく、やりたいことを「伝える」だけでソフトウェアが生まれる。その時代がもう来ている。
個人開発の戦国時代
バイブコーディングが引き起こしている変化の中で、最もインパクトが大きいのがこれだと思う。
個人開発者の爆発的な増加だ。
数字で見ると分かりやすい。AIコーディングプラットフォーム「Bolt.new」は、ローンチからわずか4.5ヶ月で年間売上4,000万ドル(約60億円)に到達。5ヶ月で100万以上のWebサイトを生成した。
「Lovable.dev」はさらに速い。8ヶ月で年間売上1億ドル(約150億円)。ヨーロッパのスタートアップ史上最速の成長だという。
個人開発者の成功事例も続々と出てきている。
- 1人で100以上のAIツールを展開し、月75万ドル(約1.1億円)を稼ぐ開発者
- 失敗アプリから方向転換し、30アプリのポートフォリオで月330万円の収益に1年以内で到達
- 3週間で作ったAIデザインツールが6週間で月150万円の定期収入に
マイクロSaaS市場は2024年の157億ドルから、2030年には596億ドルに成長する見込み。年間成長率は30%だ。
ここまではポジティブな話。でも、光があれば影もある。
「週末で80%クローン」という現実
今、個人開発者が既存のSaaS製品を高速でクローン(模倣)するケースが急増している。
Claude CodeやCursorを使えば、既存プロダクトの80%の機能を週末で再現できてしまう。実際にSlackのクローンが1時間強のライブコーディングで作られた事例もある。
何年もかけて開発されたプロダクトが、AIの力であっという間に再現される。既存のソフトウェア企業にとって、これは深刻な脅威だ。
もちろん反論もある。「v1を出すのは全体の2%の仕事。残りの98%はスケーリング、保守、改善だ」と。確かにその通りで、週末で作れるのはプロトタイプまで。本番運用に耐えるプロダクトにはまだ人間の設計力が要る。
それでも事実として、プロトタイプの速度は10倍以上になった。個人と企業の開発能力の差が、急速に縮まっている。
この流れの中で、オープンソースへの影響も指摘され始めている。中央ヨーロッパ大学の研究者らは「バイブコーディングがオープンソースを殺す」という論文を発表した。AIを介してパッケージを使うことで、開発者とオープンソースコミュニティの直接的な接点が失われるというものだ。
(参考:Vibe Coding Kills Open Source | arXiv)
個人開発の爆発は、ソフトウェアの世界の勢力図そのものを書き換えようとしている。
「年内に完全自動化」。一方で品質の課題も
2月15日、イーロン・マスクが「年内にプログラミングは完全に自動化される。AIが直接バイナリコードを生成するようになる」と発言した。
確かに、自動化が進んでいる面はある。CRUDアプリ(データの作成・読み取り・更新・削除を行う基本的なアプリ)なら、もうほぼAIに任せられる。フロントエンドのUIコンポーネントも、指示すれば出てくる。
一方で、AIが書くコードの品質にはまだ明確な課題もある。
CodeRabbitの2025年12月の分析によると、AI生成コードは人間が書いたコードと比べて重大な欠陥が1.7倍多い。セキュリティ脆弱性は最大2.7倍。
Stack Overflowの2025年開発者調査では、66%の開発者が「ほぼ正しいが微妙に間違っている」AI出力に苦労したと回答している。AIコードのデバッグに手動で書くより時間がかかるという回答も45%。
(参考:Stack Overflow 2025 Developer Survey – AI Section)
つまり現状は、「速く書ける」けど「正しく書ける」とは限らない。AIが生成したコードを読んで、間違いを見つけて、修正する。この作業はまだ人間にしかできない。
結論。プログラミングは「死なない」。でも確実に変わる
ここまでの状況を踏まえて、自分の結論を出す。
プログラミングは死なない。ただし「コードを1行ずつ手で書く」という作業は、確実に減っていく。
料理に例えると分かりやすい。
フードプロセッサーが登場したとき、「包丁の技術は不要になる」と言われた。でも実際には、料理人の仕事は「包丁で切る」ことじゃなかった。「何を作るか決める」「味を整える」「盛り付けを考える」ことだった。道具が変わっても、料理人は消えなかった。
プログラミングも同じだ。
AIが「書く」部分を担うようになると、人間に求められるのはこうなる。
- 何を作るかを正確に言語化する力:AIは指示されたことを実行する。何を指示するかを決めるのは人間
- AIの出力を検証する力:「ほぼ正しいが微妙に間違っている」コードを見抜く目。これはコードを理解していないとできない
- 設計と判断の力:どういうアーキテクチャにするか、どの技術を選ぶか。AIは提案できるが、最終判断は人間がする
- ユーザーが本当に求めているものを理解する力:技術的な実装よりも上流の「何を解決するか」
コードを書くことが目的だった人は苦しくなるかもしれない。でも、コードを手段にして何かを作りたい人にとっては、最高の時代になった。
この先、何が変わっていくか
ここまでの流れを踏まえて、この先こうなっていくんじゃないかと想像している。
まず、AI生成コードの割合はもっと増える。SemiAnalysisの予測通りなら年末には20%を超える勢いだし、個人開発者とSaaS企業の競争はさらに激しくなる。「AIで1週間で作れるもの」には独自の価値がなくなって、差別化の源泉は「データ」「ドメイン知識」「ユーザーとの関係性」に移っていくと思う。
その先では、「コードを書く」という単独のスキルの市場価値は下がっていく。代わりに、「プロダクトを設計する」「AIの出力を検証・修正する」「ユーザー課題を定義する」スキルの需要が増えていく。
プログラミング教育も変わるはず。言語の文法を教えるのではなく、AIにどう指示を出すか、AIの出力をどう検証するかが中心になっていく。
「プログラマー」という肩書きは、「コード職人」ではなく「プロダクトビルダー」を意味するようになるんじゃないかと思う。
個人開発の戦国時代は続くが、淘汰も進む。週末で作れるプロダクトは、週末で誰かに追い抜かれる。生き残るのは、技術ではなく「課題への深い理解」で差別化できたプロダクトだ。
「書く」から「伝える」へ
GitHubの4%がAIになった。この数字は今後さらに増えていく。
でも、ソフトウェアを作る人間がいなくなるわけじゃない。作り方が変わるだけだ。
コードを1行ずつ書く時代から、何を作りたいかを伝える時代へ。
この変化を恐れる必要はないと思っている。道具が進化するたびに、人間はもっと大事なことに集中できるようになってきた。今回も同じだ。
プログラミングは終わらない。次のフェーズに入っただけだ。
AI LIFEコミュニティでは、AIコーディングツールの活用法やバイブコーディングの実践など、開発者・非開発者を問わずAI活用の最前線を日々共有しています。
この変化を一緒に楽しみたい方は、ぜひコミュニティにご参加ください。