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McKinseyの社員6万人のうち2万5千人はAI。「AIと働く」とはこういうことだ

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McKinseyのCEO Bob Sternfelsが言った数字に、一瞬止まった。

「McKinseyの従業員は6万人。うち2万5千人はAIエージェントです」

世界最大級のコンサルティングファームが、AIを「ツール」ではなく「従業員」として数えている。しかも冗談ではなく、HBRのインタビューで公式に語った数字だ。
(参考:HBR IdeaCast – We Want to Make Ourselves Better

McKinsey AIエージェント統合
出典:Business Honor

18ヶ月で3,000体→2万5千体。増殖速度がすごい

18ヶ月前、McKinsey社内のAIエージェントは約3,000体だった。それが今は2万5千体。8倍以上に膨れ上がった。

この2万5千体のAIが何をしているか。具体的な数字がある。

  • 検索・情報整理で150万時間を節約(昨年1年間)
  • 6ヶ月間で250万枚のチャートを生成
  • バックオフィス人員は25%減、でもアウトプットは逆に10%増
  • クライアント対応の人員は25%増

バックオフィスを減らして、クライアント対応を増やす。AIに任せられるところはAIに任せて、人間は人間にしかできない仕事に集中する。

「成長=人数を増やす」というモデルが、ついに変わった。

Sternfelsはこう言っている。「今まではMcKinseyの成長は常に人員増とセットだった。今はそれが分離した。クライアント側は増やし、バックオフィスは減らしても、トータルで成長できる」
(参考:Yahoo Finance – McKinsey’s CEO breaks down how AI is reshaping its workforce

QuantumBlack。McKinseyのビジネスの40%を動かすAI部門

McKinseyのAI戦略の中核にいるのが「QuantumBlack」だ。

元々はF1のデータ分析をやっていた45人のスタートアップ。2015年にMcKinseyが買収して、今や1,700人体制でMcKinseyのビジネス全体の40%を牽引している。

そして社内のAIプラットフォーム「Lilli」。McKinseyの4万3千人の従業員のうち75%以上が毎月使っていて、月間50万件以上のプロンプトが処理されている。情報収集・整理にかかる時間を30%削減した。

目標は2026年末までにAIエージェントの数を人間と同数にすること。つまり、一人ひとりの社員にAIが1体以上つく世界。

具体的に、毎日の仕事がどう変わっているのか

「2万5千体のAI」「150万時間の節約」と言われても、正直イメージしにくいと思う。実際のところ、日常の仕事がどう変わっているのか。McKinseyの中で起きていることを具体的に見てみる。

例1:コンサルタントの調査業務

以前は、新しいプロジェクトが始まると、まず業界レポートや社内の過去事例を数日かけて検索・要約していた。McKinseyが過去に出したレポート、社内ナレッジベース、外部データベースを横断的に調べる必要がある。

今は、社内AIプラットフォーム「Lilli」に「○○業界のM&A動向と、過去の類似プロジェクトの成功事例をまとめて」と聞く。数分で、社内の膨大なナレッジから関連情報が整理されて返ってくる。コンサルタントは週に平均17回Lilliを使っていて、検索・整理の時間が30%減った。

例2:40タイムゾーンをまたぐスケジュール調整

グローバルプロジェクトでは、40以上のタイムゾーンをまたいだ会議調整が日常的に発生する。以前はアシスタントがメールを何往復もして空き時間を確認していた。

今は「Calendar Concierge」というAIエージェントが、参加者全員のカレンダーをスキャンして最適な候補日時を数秒で提案する。6ヶ月で12万件以上の予約を処理し、調整メールのやり取りが65%減った。

例3:英語レポートの品質チェック

McKinseyはグローバルファームだから、英語が母語でないコンサルタントも多い。以前は報告書やクライアント向けメールの文章を先輩やネイティブの同僚にレビューしてもらっていた。

今は「Tone of Voice」エージェントに文章を渡すと、McKinseyクオリティの表現に自動変換される。テスト段階の2,500人の中で最も使われているエージェントだそうだ。

どの例にも共通しているのは、「人間がやっていた下準備をAIが引き受けて、人間は判断とコミュニケーションに集中できるようになった」ということ。仕事がなくなったのではなく、仕事の中身が変わった。

MicrosoftがAIに「社員証」を発行する仕組みを作った

McKinseyの話だけではない。Microsoftが動いた。

2026年5月1日から一般提供される「Microsoft Agent 365」。これがすごい。

Microsoft Agent 365 管理画面
出典:Microsoft Inside Track

AIエージェントに以下のものが付与される。

  • 社員証(Microsoft Entra ID)
  • メールアドレス(agent@yourtenant.onmicrosoft.com のような形式)
  • Teamsアカウント(チャットやミーティングに参加できる)
  • 組織図上のポジション
  • OneDriveストレージ

つまりAIが「デジタル社員」として、人間の社員とまったく同じインフラの上で動く。Teamsで@メンションされたら反応するし、メールも送受信するし、ドキュメントも編集する。

これはもう「ツールを使う」とは違う。「同僚がAI」という世界のインフラが整った。
(参考:Microsoft Agent 365

Duolingoの「AIファースト」宣言。人を増やす前にAIでできないか証明せよ

ちなみに、語学アプリのDuolingoのCEO Luis von Ahnは全社メールで「AIファースト」方針を発表。
具体的な内容がかなり踏み込んでいる。

  • AIで代替可能な業務の外部委託(契約社員)は段階的に廃止
  • 新規採用は「AIでできないことを証明」しないと承認されない
  • 人事評価にAIの活用度を組み込む
  • 採用面接でもAIスキルを評価対象にする

von Ahnはこう言っている。「完璧を追求してゆっくり進むより、品質の小さな傷を受け入れてでも速く動く方を選ぶ」

結果として、AIを使って148の新コースを1年以内にリリース。コース数は倍以上になった。有料会員は2021年の200万人未満から800万人超に成長している。
(参考:Fortune – Duolingo CEO says he’s getting rid of contract employees, replacing them with AI

反発もあった。「正社員もクビになるのか」と。von Ahnは「正社員は解雇しない。契約社員はルーティン業務からクリエイティブな仕事にシフトする」と釈明している。

UberやShopifyも同様のAIファースト方針を打ち出している。「人を雇う前に、まずAIでできないかを考える」。これが急速にテック企業の標準になりつつある。

日本企業にとって、これは何を意味するのか

McKinseyがAIを「従業員」として数えている。Microsoftが「AIに社員証を発行する」インフラを提供している。

この2つが同時に起きているのは偶然ではない。

McKinseyが実証したのは「AIエージェントを大量投入すれば、少ない人数でアウトプットを維持・向上できる」というビジネスモデル。Microsoftが提供したのは「それを実際に運用するための企業向けインフラ」だ。

日本企業、特に中小企業にとってのポイントは3つある。

  • 「人が足りない」の解決策が変わる。採用ではなくAIエージェントの導入が現実的な選択肢になる
  • バックオフィスから始めるのが正解。McKinseyもまずバックオフィスの25%をAIに置き換えた
  • Microsoft 365を使っているなら、Agent 365は追加月額15ドルで使える。インフラの壁は思ったより低い
「AIと一緒に働く」世界はもう始まっている。

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Author

松原 潤

松原 潤

官公庁→大手向けITコンサル→SIer→中小企業向けITコンサルを経験。 現在はAIコミュニティ「AI LIFE」を運営しつつ、DX/業務改善、CRM・Web・データ活用を支援。 生成AIと自動化で“売上アップ×工数削減”を実現するのが得意です。