PowerPointやGoogleスライドに代表されるスライド資料の自動生成は着実に進化していますが、まだ多くの場面で「人間と同じクオリティに届かない」と感じる方は多いかと思います。
なぜAIはスライドの生成が苦手なのか?の原因を解説します。
そして、現状、我々はスライド生成を自動化することはできないのか、現状の到達点を整理します。
AIがスライド作成を苦手とする3つの理由
現状のAIにとってスライド作成が苦手な理由は、いくつか理由がありますが、その中の主要な3つの理由をご紹介します。
単純な文章生成ではないから
LLMは前の単語から次にどのような単語が来るかの確率を計算して文章を生成することを得意としています。
ですが、スライド生成にはその文字をどこに配置するか、どこに余白を持たせるか、またどのタイミングで次のページに遷移するかなど、単純に文章を生成するだけではない要素がたくさん含まれています。
また、全体のページの設計のような全体最適を考える必要も出てくるので、まだ文章を生成するというだけのスキルではなかなか対応できない部分が多くあり、そのためスライド生成は苦手になっています。
例えば、1枚に情報を詰め込み過ぎる、視線導線が蛇行する、強弱が曖昧、図と本文の主従が逆転、枚数配分がアンバランス(冒頭に冗長、結論が薄い)等が発生しやすいです。
評価基準が曖昧
“良いスライド”というのは、目的・聴衆・場面によりけりで“唯一解”がありません。このような正解が1つに定まらないものはまだAIには難しい領域となっています。
例えば、ジョブスがiPhoneをリリースする際のプレゼンと、一般企業で若手社員が企画プレゼンする際のスライドは正解が異なるかと思います。
その結果、そのスライドを使用するシチュエーションと内容が合わず、すぐに”良いスライド”を生成することが難しくなります。
例えば、一般論で安全運転に寄ってしまい主張が薄くなったり、行動喚起が不明瞭になったりすることがあります。
スライドツールとの連携
スライドはパワーポイントかGoogleスライドの形式で活用することがほとんどかと思います。
ですが、各AIツールで作成されたスライドをそのようなスライドサービスに連携する際にうまく調整することができず、
結果的にレイアウトが崩れたり等、綺麗なスライドを生成できないことが多いです。
例えば、スライドマスターや自動改行や表の折返し、画像トリミングの境界処理等を調整する難易度が高く、結果、行間が詰まる/箇条書きの字下げが崩れる/表がはみ出す/画像比率が微妙に歪む/マスター未適用でフォント混在/PDF化で改ページがずれる等が起こってしまうことが多いです。
現状のスライド生成の最適解は?
今回は、私が今後AIでスライド生成していく理想のスタイルである、下記の条件でAIスライド生成の最適解を探りました。
- ぺらぺら音声入力で内容のイメージを話してそのままプロンプトへ
何十行も決まったフォーマットに沿って、・形式:~~、・ページ数:~~のようには指示したくないです。ぺらぺら音声入力で話した内容をそのまま投げる。 - 生成されたスライドをダウンロードして編集する前提
多分一発で完璧にできるとは思ってないので、ダウンロードして多少手直しすることを前提にエクスポートしてどうなるかも確認しました。
一番良かったのは「Manus」!(※でも有料)
プロンプトは下記で生成しました。
概要の部分は、音声入力で話した内容そのままです。
下記のタイトルで動画を作ります。その動画で使うスライドを作ってください。
・タイトル
【AI入門編】まず何からしたらいい?ChatGPTの始め方とこれだけ押さえといたらいいというポイント解説
・内容の概要
まず流れとしては、この動画にたどり着いてくれてありがとう。
素晴らしいですっていうところから始まって、その後、いろんなAIツールが出てきたり、これ使うときはこうしないといけないみたいなテクニカルなポイントみたいなのがどんどんと情報として出てきてしまっているので、なんかAI使うにもこうしないとあんま使えないんじゃないかみたいな、ハードルばっかり上がってしまっているかなと思うんですけど、とりあえずこれだけ使ってたらいいっていうポイントを話していきます。
結論としては、まずChatGPTかGeminiかClaudeみたいないわゆる汎用AIって言われる大体何でもできますよ的なAIを1個使うっていうところからスタートっていうので完全にOKだと思ってます。
それ以外のいろいろな特別な用途でこれを使った方がいいみたいなのはあるんですけど、例えば画像とか動画を生成したいんだったらChatGPTのオープンAIのSoraを使うとか、そういういろいろなところはあるんですけど、そういうのはこれから少しずつ取り入れていったらいいかなと思っています。
と思っているので、まずは大体の用途、多くの用途で使える汎用AIを使っていくというのでOKです。その後に自分がどのAIを使ったらいいか分からないってなりますよね。
そういう人のためにこのツールを作っておいたので、これを使って自分にぴったしのAIを選定してもらってください。
おそらく多くの人がChatGPTっていう風になってくると思うのでChatGPTの導入の仕方をここから解説していきます。
生成結果
5分後くらいに一発で下記のスライドが完成。
背景やデザインはもうちょっと次からは指定しても良いかと思いましたが、要素がかぶっていたり、明らかにずれていたり等、他であるようなミスがなく素晴らしいです。
また、他ツールはパワーポイントのPPTXでダウンロードしたら、レイアウトがずれるみたいなことがあったのですが、Manusはそれもありませんでした。
ダウンロードしたPPTXがこちら。

Manusで表示されていたそのまんまでパワーポイント化できました。最高。
でも有料…!
無料プランの場合、最初1,000クレジットと毎日300クレジットが供給されるようです。
今回のスライド作成を一発実行しただけで-205クレジットだったため、無料の範囲内では1日に1回スライド生成使うくらいしかできず、現実的に1階でうまく生成できないことも多いかと思いますので、業務利用では無料プランでは厳しそうです。

アップグレードは下記の料金感。

その他に検討した方法: GenSparkとまじん式(AI×GAS)
GenSpark
GenSparkも評判が良かったので試してみました。
プロンプトは全く同じで生成。
シンプルなデザインは良いのですが、ちょっと下の方に余白がありすぎたり等、まだ若干Manusには及ばない印象。
また、パワーポイントに出力した結果も少しずれがあり残念な結果に。

最近話題のまじん式(AI×GAS)
最近バズっているまじん式でのスライド生成も試しました。
内容としては、まず生成AIでGASを生成し、それをGoogleスライドにて実行するというもの。
プロンプトは同じで、生成結果がこちら。

スライドに何も書かれてないし、Googleのロゴ多いし、そもそも普通に実行中にエラー出てましたね。
私の実行方法が悪いのかもしれませんが、色々な方の下記のような”エラー解消版”等も試してみても一回もバシッと成功することは無かったです。

まとめとAIスライド生成の今後
現状はManusが一番精度が高くスライドを生成でき、その他では少しレイアウトが崩れていたりというような結果になりました。
しかし今、生成AIの成長が目覚ましく、昨日までできなかったことが明日にはできるようになっているという状況が続いております。
Web上には公開プレゼン資料が多数あり、つまり、スライドの教師データが溢れているため、そこからAIモデルが向上し、雑なプロンプトでも一発で綺麗なスライド生成が可能になる日もそう遠くはないはずです。
ただしまだ現状は、無料でサクッとスライドを作る方法は見当たらず、できたとしてもしばらくは人の仕上げが必要になりそうです。