AI実務

経理・総務をAIで効率化するコツ

「経理や総務こそAIで楽にしたいが、書類が多すぎてどこから手をつければいいか分からない」

バックオフィスの効率化でつまずくのは、見積書、請求書、稟議書、と書類を1種ずつ追いかけてしまうからだ。種類が多すぎて終わらない。経理・総務の効率化は、書類別でなく「定型事務のタイプ」で捉えると一気に進む。

本記事では、バックオフィスの定型事務を4つのタイプに分け、それぞれどこにAIを当てるかを整理する。タイプで括ると、似た事務にまとめて効かせられる。部門全体の地図はAIで業務効率化|部門別の使いどころを参照してほしい。

定型事務を4タイプに分ける

経理・総務の事務は、見た目は書類ごとに違っても、中身は次の4タイプに分類できる。タイプごとにAIの効かせ方が決まる。

タイプ 事務の例 AIの効かせ方
文書作成 各種書類・社内通知・案内文 ひな形からドラフト生成
データ整形 表の転記・体裁合わせ・分類 整形・変換・仕分け
問い合わせ一次対応 社内からの定型質問 FAQの即答・下書き
スケジュール調整 日程候補出し・通知文 候補整理・文面作成

書類が10種類あっても、文書作成タイプなら効かせ方は同じだ。1つのやり方を覚えれば、同じタイプの事務すべてに横展開できる。これが、タイプで括る効果だ。

逆に、書類1種ずつ追いかけると、見積書のやり方、請求書のやり方、と覚えることが増えて終わらない。タイプで束ねると、覚えるやり方は4つで済む。事務の見た目でなく、中身のタイプで捉える。これが、種類の多いバックオフィスを効率化する発想の起点だ。

タイプ1:文書作成

定型の文書は、ひな形と必要情報を渡してドラフトを作らせるのが基本だ。社内通知、案内文、各種書類の下書きが対象になる。

コツは、自社のひな形をAIに覚えさせる形で使うことだ。過去の文書を見本として渡し、「この形式で、今回の情報を入れて」と頼むと、自社の体裁に沿ったドラフトが出る。ゼロから書かせるより、自社の見本を渡すほうが手直しが減る。

タイプ2:データ整形と転記

表の体裁を整える、バラバラの形式を統一する、項目で仕分ける。こうしたデータ整形は、地味だが時間を食う事務の代表だ。

AIは、貼り付けたデータの整形や分類を手早くこなす。ただし、金額や数値そのものの正しさは、整形後に人が必ず確認する。整形の過程で数字がずれることもあるので、確定処理に使う数字は目視チェックを外さない。

タイプ3:社内問い合わせの一次対応

「経費精算の締めはいつ」「この申請はどの書類」といった社内からの定型質問は、総務に繰り返し寄せられる。ここはFAQの一次対応としてAIが効く。

よくある質問と答えをAIに持たせ、社内からの問い合わせにまず一次回答を返す。判断が要るものだけ人に回せば、総務の問い合わせ対応の負担が減る。社外向けの問い合わせ自動化は問い合わせ対応をAIで自動化するで扱っている。

タイプ4:スケジュール調整

会議や面談の日程調整は、候補出しと通知文作成にAIが使える。複数人の都合を踏まえた候補の整理、調整メールの下書きが対象だ。

調整の最終確定は人が行うが、候補の整理と文面づくりという手間の部分をAIに渡せる。細かいが頻度の高い事務ほど、自動化の効果が積み上がる。

確定処理のチェックは人が担う

4タイプに共通する線引きが1つある。お金の確定、承認、対外的に責任を持つ数字は、人が確認するということだ。

AIに任せるのは、ドラフト・整形・一次対応・候補出しといった「手前の作業」だ。最終的な数字の正しさと承認は、経理・総務の担当者が握る。この線を守れば、効率化しても事務の信頼性は落ちない。失敗を避ける考え方はAI導入でよくある失敗と回避策にも通じる。

まず1タイプ・1業務から始める

4タイプを一度に攻めようとすると、結局どれも中途半端になる。バックオフィスでも、最初は1タイプの1業務から始めるのが定石だ。

たとえば文書作成タイプの中から、一番頻度の高い定型文書を1つ選ぶ。そこでうまくいったやり方を手順にして、同じタイプの他の文書に広げる。1タイプで型ができれば、そのタイプ内は横展開で一気に進む。

どの業務から始めるかは、頻度と面倒さで選ぶ。毎週繰り返していて、現場が一番面倒だと言っている事務が、最初の一歩に向く。導入の進め方は中小企業のAI導入の進め方と同じ考え方だ。

属人化した事務こそ文書化する

バックオフィスには、特定の担当しか手順を知らない事務が眠っていることが多い。「この処理はあの人しかできない」という状態は、その人が休むと業務が止まる。

こうした属人化した事務は、AIで手順を文書化しておくと、他の人にも引き継げる。効率化と同時に、属人化の解消も進められる。手順の文書化のやり方は社内マニュアルをAIで作る・更新するで詳しく扱っている。

よくある質問

Q. 会計データをAIに入れても大丈夫ですか?

A. 取引先名や金額など機微な情報をそのまま入れるのは避ける。固有名詞を伏せる、会社が認めた安全な設定のツールを使う、といった運用が前提になる。情報の扱いは情報漏洩の記事を参照してほしい。

Q. 会計ソフトと連携しないと意味がないですか?

A. 連携がなくても、文書作成やデータ整形、一次対応の効率化は始められる。まず連携不要の事務から効果を出し、必要が出てから連携を検討する順番でよい。最初から大きな仕組みを作る必要はない。

Q. 経理は正確さが命です。AIを使って大丈夫ですか?

A. 正確さが要る部分こそ、人のチェックを外さない線引きが効く。AIは下書きと整形まで、確定と承認は人。この棲み分けなら、作業を速くしながら正確さを保てる。

Q. 担当が1人しかいません。それでも効果がありますか?

A. 1人体制こそ効果が大きい。文書作成や整形、一次対応をAIに渡すだけで、その1人が抱えていた作業量が減り、確認や判断に時間を回せる。さらに手順を文書化しておけば、急な休みのときの引き継ぎも楽になる。

Q. 専用の経理AIツールを入れるべきですか?

A. まずは汎用のチャットAIや既存ソフトの標準機能で、文書作成や整形から始めるとよい。専用ツールは、効果が出て、自社固有の処理を自動化したい要件が明確になってから検討する。最初から専用ツールを揃える必要はない。

経理・総務をAIで効率化する、まとめ

バックオフィスの効率化は、書類別でなく文書作成・データ整形・一次対応・スケジュール調整の4タイプで捉える。タイプで括ると、似た事務にまとめて効かせられる。確定処理のチェックは人が担う線引きを守れば、効率化と正確さを両立できる。書類の数に圧倒されず、タイプから攻める。

書類を1種ずつ追わず、事務のタイプでまとめて効かせる。


AI LIFEには、経理・総務の現場でAIを使っている実務者が集まっています。どの事務をAIに渡し、どこを人のチェックに残したか。管理部門ならではの線引きの工夫が共有されているので、自社の運用づくりに役立ちます。
(参考:AI LIFEとは